ゲレ族 マスク


コートジボワールのダン族と文化的に密接なゲレ族のマスクです。
この仮面は通常のゲレの仮面とかなり異なる造形です。

造形

このマスクを作った彫刻家は非常に大胆だったようで、通常のゲレのマスクとは大きく異なり、平面的に図式化・抽象化された顔の構成です。
柔らかな丸みを帯びた角と額は優美な印象を与えつつ、大きく張った鼻とV字型のレリーフ状に表現された口はマスクに緊張感を与えます。
眼は斜めに鋭く穿たれ、その上には別のV字型の眼あるいは眼を覆う突起物が高く浮彫にされています。
この抽象性は、想像力と自信に満ちた彫刻家があえて既成概念を乗り越え、独自のスタイルを作り上げた例と考えられます。
このマスクの各パーツは顔の全体のバランスの中でよく調和しており、ゲレやグレボに特有の抽象的かつ野性的な美の観念を作りだすことに成功しています。

文化

ゲレの仮面は通常は攻撃的な造形をしており、悪を取り締まる司法の役割や勧善懲悪を示すために使用されます。
ただし、本作品は極めて例外的な図像を持っており、そのような機能とは別の役割を担った可能性が高いと考えられます。
類例が非常に少ないため、かつてどのような儀礼に使用されていたかは不明です。