来歴
ex. Private collection, London, UK
ex. Petr Zubek, Dusseldorf, Germany
造形
目を貝殻で表現し、小さな口を刻み、素朴な擬人化がされています。
この像の特徴は、全体に塗られた白いカオリンの痕、頭頂のインディゴブルーのパウダー、そして首周りに巻かれた南京錠、体に巻き付けられた布とそこに充填された魔法のハーブです。
ガーナからベナンにかけて住むエウェ、アジャ、フォンはブードゥー教(ヴォドゥン信仰)を実践しており、これらの人々の間で作られる呪術的な彫像は、呪力を持つシンボルや神への捧げものとするために彫像に直接かけられた酒や各種の生贄に覆われています。これが個性的な外観と強いバイタリティーを生み出します。
文化
特にトーゴ、ベナン、ナイジェリアの沿岸地域には、エウェ、アジャ、ガン、オウアチ、フォンといった密接に関連した文化を持つ民族が存在します。これらの民族は創造主なる神(マウ、リサ)から産まれた神々、精霊への信仰を基本とした世界観を持っています。
この宇宙的な力や神々は「ウォドゥン」と呼ばれ、ブードゥー教(ヴ―ドゥ―教)の語源となりました。
これらの像はボチオ、ボシオ(bochioあるいはboccioなど)と呼ばれます。
ボチオ像は、個人的な不幸、また、飢饉、疫病、戦争などの災難の解決にも使用されます。ボチオはそれぞれの状況にあわせて問題解決のために制作されるので、全く同一の組成のものは存在しません。そのため、あるボチオがどのような状況で、どのような問題に使われたかを調べることは困難です。しかし、いくつかの決まったスタイルは存在します。
まず、木彫り職人が呪文を唱えながらこのような像を木から彫ります。そして、そこに布の切れ端、貝殻、鉄、角、動物の頭蓋骨、錠前、薬草などの素材を目的にあわせて組み合わせることで完成するのです。
身体の特定の部位に象徴的な価値があり、付加物を取り付ける場所にも意味があったりします。
例えば、、、目は危険が迫っていることを察知し人々を守る。胸は感情の象徴であり忍耐と落ち着きに関わる。頭は思考や支配を表し、胃は魔術とも関連する。など。
ハーブや布で包まれた像は病気を追い払い、危険を「封じ込め」排除するために使われます。
また、ボチオに使われる特定の色の布にも意味があります。それにちなんだヴォドゥンの神々の力を引き寄せるためです。赤は医術を司る神サクパタ、赤と鉄は雷神ヘヴィオソにちなんでいます。
赤は単純に呪力や秘密を示す色として使われる場合もあるようで、この記事のボチオも最下部に赤色の布が見えています。
この作品の根元は、おそらく家の入り口や裏側、庭の中央、あるいは祖先の祠の横などに植え付けられました。
鍵がたくさんついていることから、これは「kpodohonme bochio」というカテゴリに属することが推定されます。
南京錠は、願い事や特定の呪文を封じ込めたりするシンボルとして使用され、ブードゥーの像につけらることが多い物です。特に金属製のものは強いと見られています。鉄や戦争の神グーを想起させためです。
かつては像に穴をあけ木製の杭を打ち込むことが多かったようで、古い物にはそのタイプのものが多く見られます。時代とともに錠前に変わりました。